「最近、背中が丸くなってきた気がする」
「長時間のデスクワークで猫背になっていないか気になる」
「猫背を予防するために、脊柱起立筋を鍛えた方がよいの?」
このように、姿勢や背中の丸まりが気になっている方も多いのではないでしょうか。
猫背は、単純に「背中が丸い」というだけではなく、胸椎や骨盤、頭部など身体の位置関係が変化している状態として考えることができます。
また、脊柱起立筋は背骨の周囲に位置し、姿勢を保持したり身体を動かしたりするときに働く筋肉の一つです。
そのため、猫背を考えるときには、脊柱起立筋だけを見るのではなく、背骨や骨盤、肩甲帯、股関節などを含めた全身のバランスを見ることが大切です。
この記事では、理学療法士の視点から、猫背と脊柱起立筋の関係、猫背になりやすい生活習慣、姿勢のセルフチェック、予防のために日常生活で意識したいポイントについて解説します。
なお、姿勢には個人差があるため、「この姿勢なら必ず悪い」「脊柱起立筋が弱いから猫背になる」と単純に判断することはできません。
猫背とは?まず姿勢の特徴を知ろう
猫背という言葉は一般的に、背中が丸くなっている姿勢を表すときに使われます。
身体の構造から見ると、胸椎の後弯が強くなったり、頭部が前方に位置したり、骨盤の傾きが変化したりするなど、複数の身体部位の位置関係が変化していることがあります。
ただし、猫背にはさまざまな姿勢パターンがあり、すべての人が同じ姿勢になるわけではありません。
例えば、
- 胸椎の後弯が目立つ
- 頭部が前方に位置する
- 肩が前方に出る
- 骨盤の位置や傾きが変化する
- 腰椎のカーブが変化する
など、複数の特徴が組み合わさることがあります。
そのため、猫背を考えるときには、背中だけを見るのではなく、身体全体の位置関係を確認することが大切です。
また、姿勢には個人差があります。
「背筋が伸びていれば良い姿勢」「背中が少し丸いから悪い姿勢」と一律に判断するのではなく、痛みや動かしにくさなどの症状、日常生活への影響も含めて考える必要があります。

良い姿勢は、背筋を無理に伸ばして一直線にすることではありません。身体の各部位がどのような位置関係にあるのかを考えることが大切です。
姿勢の考え方について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
脊柱起立筋とは?背骨を支える筋肉の役割
脊柱起立筋は、背骨の左右に沿って位置する筋肉群です。
一つの筋肉だけを指す名称ではなく、一般的には腸肋筋、最長筋、棘筋などから構成される筋群として扱われます。
脊柱起立筋は、背骨を伸ばす動作や姿勢を保持するときなどに働きます。
日常生活では、立っているときや座っているとき、身体を起こす動作など、さまざまな場面で背骨周囲の筋肉が働いています。

脊柱起立筋は姿勢を保持する筋肉の一つ
人間が立った姿勢や座った姿勢を保つためには、脊柱起立筋だけでなく、腹部や骨盤周囲、下肢など多くの筋肉が協調して働く必要があります。
そのため、
「猫背だから脊柱起立筋を鍛えればよい」
と単純に考えるのではなく、身体全体の動きや筋肉の働きを考えることが大切です。
脊柱起立筋は左右に存在するため、姿勢を考える際には左右のバランスについても確認することが大切です。
脊柱起立筋の左右差について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください
猫背と脊柱起立筋にはどのような関係がある?
猫背のように身体の位置関係が変化すると、姿勢を保持するために働く筋肉の活動パターンも変化する可能性があります。
脊柱起立筋も姿勢保持に関わる筋肉の一つであるため、猫背と脊柱起立筋には関連があります。
ただし、
「猫背=脊柱起立筋が弱い」
と決めつけることはできません。
姿勢は、
- 脊柱の形状
- 骨盤の位置
- 股関節の状態
- 肩甲帯の位置
- 筋力
- 関節の動き
- 身体の使い方
- 日常生活での姿勢
など、さまざまな要素によって変化します。
したがって、猫背が気になる場合には、脊柱起立筋だけに注目するのではなく、全身のバランスを確認することが重要です。

姿勢は脊柱起立筋だけで決まるものではなく、腹部や骨盤周囲など、複数の筋肉が関係しています。筋肉のバランスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
猫背になりやすい原因
猫背のような姿勢になる背景には、さまざまな要因があります。

長時間同じ姿勢を続ける
デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けると、首や肩、背中などに負担がかかることがあります。
日本整形外科学会も、猫背や前かがみ、長時間同じ姿勢で作業することなどを肩こりの原因の一つとして挙げています。
特に、仕事や勉強などで長時間座っている場合には、姿勢そのものだけではなく、同じ姿勢を続けないことも大切です。
スマートフォンやパソコンを長時間使用する
スマートフォンやパソコンを使用するとき、画面を見るために頭部が前方へ移動したり、肩が前に出たりすることがあります。
この姿勢を長時間続けることで、首や肩、背中に負担を感じる人もいます。
身体を動かす機会が少ない
日常的に身体を動かす機会が少ないと、筋力や身体の柔軟性、運動能力などに影響することがあります。
姿勢を整えることだけを考えるのではなく、日常的に全身を動かす習慣をつくることも大切です。
姿勢を意識しすぎる
猫背を気にするあまり、常に胸を張って背筋を伸ばそうとする人もいます。
しかし、姿勢は「一つの形を長時間維持すること」が目的ではありません。
必要に応じて姿勢を変えたり、身体を動かしたりすることも重要です。
デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けると、首や肩に違和感を覚えることがあります。首や肩の違和感と姿勢との関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。
猫背が気になるときのセルフチェック
猫背が気になる場合は、まず自分の姿勢を客観的に確認してみましょう。
横から姿勢を確認する
鏡やスマートフォンの写真などを利用して、身体を横から確認します。
確認するポイントの例として、
- 頭部の位置
- 肩の位置
- 背中の丸まり
- 骨盤の位置
- 膝の位置
- 足部の位置
などがあります。
ただし、これらが一直線になっていないからといって、必ず身体に問題があるわけではありません。
姿勢には個人差があるため、セルフチェックはあくまでも「現在の姿勢を知るための参考」として利用してください。
動いたときの姿勢も確認する
姿勢を確認するときは、立っている姿だけを見るのではなく、歩く、座る、立ち上がるなどの動作も確認してみましょう。
静止した姿勢だけでは分からない身体の使い方が見つかることがあります。

猫背予防のために日常生活でできること
猫背を予防するためには、常に背筋を伸ばしておくことだけが重要なのではありません。
長時間同じ姿勢を続けない
デスクワークや勉強などで座っている時間が長い場合には、途中で立ち上がったり、身体を動かしたりしましょう。
姿勢を「固定する」のではなく、適度に姿勢を変えることを意識してください。
デスク環境を見直す
机や椅子、パソコンの画面など、作業環境も姿勢に影響する可能性があります。
画面を見るために頭を大きく前へ出していないか、肩をすくめた姿勢になっていないかなどを確認してみましょう。
背中だけでなく全身を動かす
猫背予防では、背中の筋肉だけを鍛える必要はありません。
背中、腹部、骨盤周囲、股関節、下肢など、全身をバランスよく動かすことを意識しましょう。
無理に胸を張り続けない
「良い姿勢にしよう」と考えると、胸を張って背筋を伸ばし続けようとする人もいます。
しかし、姿勢は一つの形を固定するものではありません。
楽に呼吸ができ、必要な動作を行いやすい姿勢を意識しながら、同じ姿勢を長時間続けないことが大切です。

脊柱起立筋を含めた身体のバランスを整える運動
猫背予防を目的として運動を行う場合は、脊柱起立筋だけを鍛えるのではなく、身体全体を動かすことを意識しましょう。
胸椎を動かす運動
座った姿勢や四つ這いなど、無理のない姿勢で胸椎を動かす運動を取り入れる方法があります。
動作中に痛みが出る場合は無理に続けないようにしましょう。
体幹を使った運動
体幹の筋肉を使う運動も、身体を安定させる能力を維持するための方法の一つです。
例えばプランクなどがあります。
ただし、長時間行うことが目的ではありません。
身体が大きく崩れない範囲で、自分の体力に合わせて行うことが大切です。
運動は「猫背を治す」ためだけに行わない
運動の目的は、特定の姿勢を無理に作ることではありません。
身体を動かす習慣をつくり、筋力や柔軟性、身体をコントロールする能力を維持することも重要です。
痛みがある場合や運動方法が分からない場合には、医療専門職へ相談することをおすすめします。

運動を行う際には、特定の筋肉だけを意識するのではなく、関節の動きや身体全体のバランスを考えることも重要です。
脊柱起立筋を鍛えるだけで猫背は改善する?
結論からいうと、脊柱起立筋だけを鍛えれば、必ず猫背が改善するとはいえません。
姿勢には、脊柱起立筋だけでなく、腹部や骨盤周囲、股関節、肩甲帯、下肢など多くの身体部位が関係しています。
また、姿勢には筋力だけでなく、関節の動きや身体の使い方、生活環境なども関係します。
そのため、
「猫背だから脊柱起立筋を鍛える」
という一つの方法だけに限定するのではなく、
「身体全体を動かし、日常生活で同じ姿勢を長時間続けない」
という考え方が大切です。

猫背と肩こり・腰痛などの症状について
猫背のような姿勢がある人の中には、首や肩、背中などに違和感を感じる人もいます。
日本整形外科学会では、肩こりの原因の一つとして、猫背や前かがみなどの姿勢、長時間同じ姿勢を続けることなどを挙げています。
一方で、腰痛には脊椎に由来するものだけでなく、さまざまな原因があります。
そのため、
「猫背だから腰痛になった」
「猫背を改善すれば腰痛が治る」
と単純に判断することはできません。
姿勢が気になっていて、さらに痛みやしびれなどの症状がある場合には、姿勢だけを自己判断するのではなく、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。
猫背が気になる場合に医療機関へ相談した方がよいケース
姿勢が気になるだけであれば、まず日常生活や運動習慣を見直すことから始めてもよいでしょう。
しかし、次のような症状がある場合には、自己判断だけで対応せず、医療機関への相談をおすすめします。
- 強い痛みがある
- 痛みが長期間続いている
- 手足のしびれがある
- 手足に力が入りにくい
- 歩きにくさがある
- 転倒後から痛みや動かしにくさがある
- 日常生活に支障が出ている
- 姿勢の変化が急に現れた
特に腰痛については、しびれや筋力低下などを伴う場合など、早めの診察が必要になるケースがあります。日本整形外科学会も、下肢のしびれや力が入りにくいなどの症状を伴う腰痛では、放置せず整形外科を受診するよう案内しています。
まとめ

猫背は、単純に「背中が丸くなっている状態」だけではなく、胸椎、骨盤、頭部、肩など、身体の複数の部位の位置関係が変化している状態として考えることができます。
脊柱起立筋は、背骨の周囲に位置し、姿勢の保持や身体の動きに関わる重要な筋肉の一つです。
しかし、
「猫背=脊柱起立筋が弱い」
とは限りません。
また、
「脊柱起立筋を鍛えれば猫背が改善する」
とも一概にはいえません。
猫背を予防するためには、脊柱起立筋だけに注目するのではなく、身体全体を動かし、長時間同じ姿勢を続けないことが大切です。
まずは自分の姿勢を客観的に確認し、日常生活の中で無理なく身体を動かす習慣を取り入れてみましょう。
姿勢に加えて痛みやしびれ、動かしにくさなどがある場合には、自己判断せず医療機関などへ相談してください。
本記事について
本記事は、一般的な姿勢や運動に関する情報を提供することを目的としたものであり、個別の診断や治療を行うものではありません。
姿勢や身体の状態には個人差があります。
痛み、しびれ、筋力低下、歩行の変化などがある場合には、自己判断で運動を続けず、医療機関などへご相談ください。
参考文献・参考情報
・Neumann DA.
Kinesiology of the Musculoskeletal System.
・公益社団法人 日本整形外科学会
「肩こり」
「腰痛」
「脊椎の症状」
https://www.joa.or.jp/
・公益社団法人 日本理学療法士協会
理学療法ハンドブック
https://www.japanpt.or.jp/
・厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
・PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/
※参考文献・参考情報は、本記事の内容を確認する際の資料として掲載しています。
この記事の執筆者
バラウンサー
理学療法士
臨床経験20年
整形外科領域を中心に、姿勢評価・運動療法・身体機能改善に従事。
本記事は、臨床経験を持つ理学療法士が、解剖学・運動学・理学療法の視点をもとに執筆しています。
身体の状態や症状には個人差があるため、記事では特定の症状や疾患について断定せず、一般的な情報として分かりやすく解説することを心がけています。
▶ 運営者プロフィール
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