「子どもがスポーツを始めたけれど、成長期の身体に負担はないの?」
「サッカーや野球など、特定のスポーツを続けても大丈夫?」
「運動中に膝やかかと、腰などを痛がるけれど、様子を見ていいの?」
小学生や中学生のお子さんがスポーツをしていると、このような疑問を持つ保護者の方も多いのではないでしょうか。
成長期は、骨や筋肉、関節など身体が発達していく時期です。そのため、スポーツを楽しむことは大切ですが、競技によって繰り返す動作や運動量が異なるため、身体の状態を確認しながら取り組むことも重要です。
ただし、「このスポーツは成長期に悪い」というように、競技そのものを一律に避ける必要があるわけではありません。
大切なのは、スポーツの種類だけではなく、
- どのような動作を繰り返しているか
- 練習量が急激に増えていないか
- 十分な休養が取れているか
- 痛みや動かしにくさがないか
- 身体の左右差や動作の変化がないか
などを確認することです。
この記事では、理学療法士としての臨床経験をもとに、成長期の小学生・中学生がスポーツを行う際に知っておきたい身体への負担やケガ予防のポイントについて解説します。
成長期の子どもの身体はどのように変化する?
小学生から中学生にかけては、身長や体重が変化し、骨や筋肉などの身体の構造も発達していきます。
日本整形外科学会では、成長期の児童生徒は身体が急速に発育するため、ある時点で問題がなくても、その後も同じ状態とは限らないと説明しています。
そのため、スポーツを行う場合には「今まで問題なくできていたから大丈夫」と考えるだけではなく、その時々の身体の状態を確認することが大切です。

成長によって身体の使い方が変わることがある
成長期には身長や体格が変化するため、以前と同じ運動をしていても、身体の使い方が変わることがあります。
例えば、
- 走り方が以前と違ってきた
- ジャンプや着地の動作が変わった
- 身体が硬くなったように感じる
- 特定の動作を嫌がるようになった
などの変化がみられることがあります。
このような変化がすべて異常というわけではありません。
しかし、痛みや動かしにくさを伴う場合には、単純に「成長期だから」と考えず、身体の状態を確認することが重要です。
スポーツによって身体への負担が異なる理由
スポーツには、それぞれ特徴的な動作があります。
例えば、
- 走る
- 跳ぶ
- 着地する
- 投げる
- 打つ
- 蹴る
- 相手と接触する
などです。
同じ「運動」でも、競技によって繰り返す動作や身体への負荷は異なります。
日本スポーツ協会も、発育期のスポーツ活動について、スポーツ外傷・障害予防や基本運動の習得などを含めた発育期のスポーツ活動のあり方を示しています。

同じ動作を繰り返すスポーツでは負担の集中に注意
スポーツでは、競技特有の動作を繰り返すことがあります。
例えば、野球であれば投球や打撃、サッカーであればキックやダッシュ、バスケットボールであればジャンプや着地などです。
同じ動作を繰り返すこと自体が悪いわけではありません。
しかし、練習量が多くなったり、休養が不足したり、痛みがある状態で運動を続けたりすると、身体の一部に負担が集中する可能性があります。
そのため、競技種目だけでなく、どのような動作をどのくらい繰り返しているのかを見ることが大切です。
左右非対称な動作が多いスポーツもある
スポーツの中には、利き腕や利き足を中心に使う動作があります。
例えば野球の投球やバッティングでは、左右同じ動作を行うわけではありません。
このような競技では、身体の使い方に左右差が生じることがあります。
ただし、左右差があることだけで「身体のバランスが悪い」「身体に悪い」と判断することはできません。
人間の身体にはもともと左右差があり、利き手や利き足による動作の違いもあります。
重要なのは、左右差の有無だけではなく、
- 痛みがあるか
- 動かしにくさがあるか
- 動作が以前と変わっていないか
- 特定の部位に負担が集中していないか
などを総合的に確認することです。
スポーツでは、競技によって走る、跳ぶ、投げる、蹴るなどの動作が繰り返されます。そのため、同じスポーツを続けていても、身体の使い方にはそれぞれ特徴があります。
**筋肉のバランスとは?**について理解しておくと、左右の筋肉の使い方や身体の動きを考えるうえでも参考になります。
小学生・中学生がスポーツをするときに確認したい5つのポイント
成長期のスポーツでは、競技を禁止することよりも、身体の状態を確認しながら続けることが重要です。
ここでは、保護者の方が確認しておきたいポイントを5つ紹介します。
① スポーツ中や運動後に痛みがないか
まず確認したいのが痛みです。
特に、
- 膝
- かかと
- すね
- 足首
- 腰
- 肩
- 肘
などに繰り返し痛みが出ていないか確認しましょう。
日本整形外科学会では、動作時の痛みや明らかな動作の異常がある場合には特に注意が必要としています。
「成長期だから痛いのだろう」と自己判断して、そのままスポーツを続けることには注意が必要です。
② 練習量が急激に増えていないか
新しい学年になったときや、大会前、レギュラー争いなどによって練習量が増えることがあります。
それまでより急激に運動量が増える場合には、身体の状態を確認することが大切です。
特に、
「練習時間が急に長くなった」
「練習日数が増えた」
「自主練習を始めた」
などの変化がある場合は、疲労や痛みが出ていないか確認しましょう。
③ 休養が取れているか
スポーツを続けるためには、運動だけでなく休養も重要です。
練習を頑張ることだけを重視するのではなく、疲労が蓄積していないか、十分な睡眠が取れているかなども確認しましょう。
「休むこともスポーツ活動の一部」と考えることが大切です。
④ 動作に変化がないか
以前は問題なくできていた動作が、急に変化していないか確認します。
例えば、
- 走り方が変わった
- ジャンプや着地を嫌がる
- 投げ方が変わった
- 特定の動作を避ける
- 片側だけをかばっている
などです。
こうした変化が必ず病気やケガを意味するわけではありませんが、痛みを伴っている場合には注意が必要です。
⑤ 靴やスポーツ用品が身体に合っているか
スポーツでは、靴や用具も身体への負担に関係します。
特に成長期は足の大きさなども変化するため、現在の身体に合っているか確認しましょう。
日本整形外科学会では、足の慢性的な障害の予防として、足部・下腿のストレッチングや足に合ったシューズの選択などを挙げています。

スポーツ別に考える成長期の注意点
ここからは、代表的なスポーツについて、どのような動作に注目すればよいのかを紹介します。
大切なのは、以下のスポーツが「悪い」という意味ではありません。
それぞれの競技で特徴的な動作があるため、その動作や運動量に合わせて身体の状態を確認することが大切です。

野球など投球・打撃動作が多いスポーツ
野球では投球や打撃など、身体を大きく回旋させる動作があります。
特に投球では、肩や肘だけでなく、体幹や下半身を含めた全身の動きが関係します。
そのため、
- 肩や肘に痛みがないか
- 投球フォームが急に変わっていないか
- 肘の曲げ伸ばしに左右差がないか
- 練習量が急激に増えていないか
などを確認することが大切です。
日本整形外科学会では、小学生から中学生にかけて、野球などのスポーツによる肘関節の障害には特に注意が必要としています。
サッカーなど走る・蹴る動作が多いスポーツ
サッカーでは、
- ダッシュ
- 急停止
- 切り返し
- キック
- ジャンプ
- 着地
など、多様な動作を繰り返します。
そのため、練習量だけでなく、膝や足首、足部などに痛みがないか確認することが大切です。
また、成長期に痛みが続いている場合には、単に「成長痛」と決めつけないことも重要です。
日本整形外科学会では、子どもの痛みには筋肉の疲労や関節への負担などさまざまな原因があり、痛みが続く場合には原因を確認することが重要としています。
バスケットボール・バレーボールなどジャンプが多いスポーツ
バスケットボールやバレーボールでは、ジャンプや着地を繰り返します。
そのため、
- ジャンプ時に痛みがないか
- 着地を避けていないか
- 膝や足首に痛みがないか
- 練習後に痛みが強くなっていないか
などを確認しましょう。
特に痛みが続いている場合は、無理に練習を続けるのではなく、身体の状態を確認することが大切です。
水泳など全身を使うスポーツ
水泳は全身を使う運動ですが、「水泳だから身体への負担がない」と考えることはできません。
泳法によって特徴的な動作があり、練習量が多くなれば同じ動作を繰り返すことにもなります。
そのため、
- 肩などに痛みがないか
- 泳いだ後に痛みが残っていないか
- 練習量が急に増えていないか
- 十分な休養が取れているか
などを確認しましょう。
重要なのは、「どのスポーツなら安全か」と考えることではなく、その競技の特徴と子どもの身体の状態を合わせて考えることです。
柔道・ラグビーなど接触を伴うスポーツ
柔道やラグビーなど、相手との接触や転倒を伴う競技では、スポーツ特有の外傷にも注意が必要です。
そのため、
- ルールに沿った安全な技術を身につける
- 指導者の指示に従う
- 適切な用具を使用する
- ケガをした場合は無理に競技を続けない
といった基本的な安全管理が重要です。
日本スポーツ協会では、サッカー、野球、バスケットボール、柔道、ラグビーなどについて、競技別の外傷・障害予防に関する資料を公開しています。
成長期の「身体のバランス」は左右差だけで判断しない
このブログでは「身体のバランス」についても解説しています。
スポーツをしている子どもの身体を見るときに注意したいのは、左右差があることだけを理由に「身体のバランスが悪い」と判断しないことです。
例えば、利き腕や利き足があることで、左右の使い方が異なるのは自然なことです。
一方で、
- 片側だけ痛がる
- 片側の動きを避ける
- 関節の動かしやすさに大きな違いがある
- スポーツを始めてから左右差が急に目立つようになった
などの場合には、身体の状態を確認する必要があります。
つまり、成長期のスポーツでは、
「左右差があるか」だけを見るのではなく、「その左右差が動作や痛みにどのように関係しているか」を見ることが重要です。

筋肉の左右差が起こる原因やセルフチェックについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
また、筋肉だけではなく、複数の関節がどのように動いているかを見ることも大切です。関節のバランスについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
成長期のスポーツでケガを防ぐためにできること
成長期のスポーツでは、「ケガをしないように何か特別なことをしなければならない」と考えるよりも、日常的に身体の状態を確認することが大切です。
運動前後に身体の状態を確認する
練習前後に、
- 痛みがないか
- 動かしにくい場所がないか
- 強い疲労が残っていないか
などを確認しましょう。
特に、以前にはなかった痛みが繰り返し出る場合には注意が必要です。
練習量と休養のバランスを考える
スポーツの上達には練習が必要ですが、練習量を増やすことだけが上達につながるわけではありません。
疲労が蓄積していないか、十分な休養が取れているかを確認することも大切です。
痛みを我慢して続けない
「大会が近いから」
「レギュラーだから」
「休むと迷惑をかけるから」
という理由で、痛みを我慢して練習を続けることには注意が必要です。
日本整形外科学会では、スポーツを続けられる程度の症状であっても、運動器の障害が隠れている場合があるとしています。
痛みが続く場合には、本人だけで判断せず、保護者や指導者に相談しましょう。
ストレッチだけに頼らない
スポーツ障害の予防を考えるとき、「ストレッチをすれば大丈夫」と考えるのは適切ではありません。
ストレッチだけでなく、
- 運動量
- 休養
- 動作
- 筋力
- 柔軟性
- 用具
- 身体の痛み
などを総合的に考えることが重要です。

スポーツ中の動作だけでなく、普段の姿勢や身体の使い方も確認しておくとよいでしょう。姿勢は一時的な見た目だけで判断するのではなく、身体全体の動きとの関係から考えることが大切です。
良い姿勢とはどのような状態なのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
痛みが続く場合は「成長痛」と決めつけない
子どもが身体の痛みを訴えたとき、
「成長期だから仕方がない」
「成長痛だろう」
と考えてしまうことがあります。
しかし、日本整形外科学会は、子どもの痛みにはさまざまな原因があり、痛みが続く場合には原因を確認することが重要だとしています。
特に、
- 痛みが何度も繰り返す
- 痛みが徐々に強くなる
- 運動していないときにも痛い
- 関節が動かしにくい
- 腫れがある
- 明らかに動作が変わった
- スポーツ以外の日常生活にも影響している
といった場合には、自己判断でスポーツを続けず、医療機関への相談を検討しましょう。
日本整形外科学会も、動作時の痛みや明らかな動作異常がある場合には注意が必要としており、異常が疑われる場合には整形外科専門医への相談を勧めています。

成長期の子どもに「避けるべきスポーツ」はある?
結論として、特定のスポーツだけを取り上げて「成長期には避けるべき」と一律に考えることはできません。
野球、サッカー、バスケットボール、水泳、柔道など、それぞれのスポーツには異なる特徴があります。
大切なのは、
- 子どもの成長段階
- スポーツの種類
- 繰り返す動作
- 練習量
- 休養
- 身体の痛み
- 動作の変化
- 身体の状態
などを総合的に考えることです。
スポーツをすること自体は、子どもの身体活動や運動習慣という面でも大切です。
そのため、「ケガが心配だからスポーツをさせない」という考え方ではなく、安全にスポーツを続けられる環境を整えることが重要です。

まとめ
小学生や中学生の成長期は、身体が大きく変化する時期です。
スポーツによって、
- 投げる
- 打つ
- 蹴る
- 走る
- 跳ぶ
- 着地する
- 接触する
など、さまざまな動作を繰り返します。
そのため、特定のスポーツが成長期の子どもに悪いと考えるのではなく、競技特有の動作や練習量、休養、身体の状態を確認することが大切です。
また、スポーツをしている子どもに左右差があるからといって、それだけで身体のバランスが悪いとは判断できません。
左右差だけではなく、痛みや動かしにくさ、動作の変化などを合わせて確認しましょう。
特に、痛みが続いている場合や動作に明らかな変化がある場合には、「成長期だから仕方がない」と自己判断せず、保護者や指導者に相談し、必要に応じて医療機関への相談を検討することが大切です。
成長期のスポーツで大切なのは、競技を制限することだけではありません。
子どもの身体の変化を見ながら、無理なく、安全に、スポーツを楽しめる環境をつくること。
これが、成長期のスポーツを長く続けるために大切な考え方です。
この記事について
本記事は、成長期のスポーツ活動と身体の状態について、理学療法士の臨床経験と運動器に関する情報をもとに一般的な情報をまとめたものです。
本記事は医師による診察や診断、治療に代わるものではありません。
お子さんに継続する痛み、強い痛み、腫れ、関節の動かしにくさ、明らかな動作の変化などがある場合には、自己判断で運動を継続せず、医療機関への相談を検討してください。
参考文献・参考情報
・公益社団法人 日本整形外科学会
保護者・養護教諭・学校医向けFAQ「運動器の不具合について」
・公益社団法人 日本整形外科学会
保護者・養護教諭・学校医向けFAQ「成長痛について」
・公益社団法人 日本整形外科学会
「足の慢性障害」
・公益財団法人 日本スポーツ協会
「発育期におけるスポーツ活動のあり方」
・公益財団法人 日本スポーツ協会
「スポーツ外傷・障害予防ガイドブック」
この記事の執筆者
バラウンサー
理学療法士
臨床経験20年
整形外科領域を中心に、姿勢評価・運動療法・身体機能改善に従事。
この記事は、臨床経験を持つ理学療法士が、身体の構造や運動の視点をもとに執筆しています。
▶ 運営者プロフィール
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